こんにちは、元教師のモト先生です。教師として高校に6年間勤務後、退職して別の道へ進みました。
さて、今回は「給特法」についてです。
教師の働き方改革が叫ばれるようになって久しい時代。その元凶とも呼ばれ問題視されているのが、この給特法です。
第一の問題として、給特法は廃止すべきなのかどうか?が挙げられます。
これは結論から言うと、もちろん一刻も早く廃止すべきなのです。
しかしながら、なかなか簡単に法改正とはいかないのも現実問題です。そこには給特法にまつわる様々な考え方があるからなんですね。
今回は給特法の廃止についてと、何故なかなか改正できないのかを解説していきます。
目次
給特法は教師を働かせ放題にする時代遅れの法律
給特法の正式名称は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」といいます。長いですねえ。
内容はというと、教師の給料には給与月額4%相当の「教職調整額」が上乗せされるというもので、その代わりに残業代が支給されないというものです。
つまり国にとって、教員は4%上乗せで払ってるから働かせ放題というわけですね。
給特法が成立したのは1971年
この法律が制定されたのは、かなり昔の1971年。このころは教師の仕事も今より少なく、いろいろと許された時代でしたので、残業自体があまり無かったわけですね。
しかし様々な雑務が増え、さらに少子化の影響もあって人数が削減された今の教師は、残業時間が昔と比較にならないほど増えています。
給料月額の4%どころでは済まない実態があるわけです。もはや給特法は時代遅れの法律とも言えるでしょう。
過労死や休職する教師が増えている
教員の時間外労働は多く、過労死ラインを超える教師が大半とも言われています。
実際、私が今まで勤務した学校でも、残業をするのが当たり前というような風潮はありました。
残業代が出ないことで、管理職の勤怠管理も甘くなってしまう面はあるでしょう。教員が長く残っていても、実質的に給与が発生しないですからね。言ってしまえば、給料発生しない=仕事ではない=”関係ない”わけですよ。
毎年にかけて数千人が休職し、精神的に追い込まれて自殺してしまう教員だっています。教育評論家の妹尾昌俊氏など有識者によってまとめられたデータが、Yahooニュースにもよく取り上げられていますね。
若者の教員離れも深刻化
さらに若者の教員離れも深刻です。教員を志して教育学部に入ったものの、教員の実態を知ったことでデメリットの方が多いと感じ、志望先を変えてしまう人が増えているようです。
教員志望者数の減少により、本来入るはずだった優秀な人間が他へと行き、質の低下が警鐘されています。教員は判断力が非常に重要な仕事ですが(他の仕事も同様ですが)、判断力の高い人ほど避けてしまう仕事に近づいてしまっている現状があります。
給特法は廃止すべき法律である
給特法は一刻も早く廃止すべきであるというのが私の考えです。
残業代を適切に出すことで、まず管理職の勤怠管理への意識が向上します。また、教員一人ひとりが、給料が発生することで残業への意識が変わります。
お金が出ているわけだから、逆に学校に残ることへの罪悪感が生まれるわけです。教員って基本的に良い人多いですから。今まで学校に残ることが美徳だったものが、残ることによって余計にお金を受け取るわけですので、仕事を皆で終わらせて早めに帰ろうという風潮に少なからず変わるはずです。
忙しくて仕方なく残業している教員の心情としても、働きに対して給料が増えるというのは気持ち的に少し楽になります。「頑張っているのに給料は同じで年功序列制、しかも上手くサボっている先輩教員より確実に低い…」というような心理的負担が軽減されます。
働きに対しては正当な報酬を。労働者として当たり前の権利ではないでしょうか。
教員はエッセンシャルワーカーと言われることも多いです。実際に私が働いていた職場では、県からそう言われていました。ならばそれに見合った待遇をして欲しいものですよね。
だから若者は教員離れしていくし、責任感の強い人ほど精神を病んでしまうのです。
なぜ給特法を改正できないのか
給特法の改正に当たり、まず考えられるネックは財源です。残業代の未払い額は年に9000億円と言われているのです。
残業代の未払い額、年に9000億円を用意する必要がある
つまり給特法を改正するには9000億円を用意しなくてはいけません。すぐに用意してくれといって財務省がすぐに動くような額では無さそうですよね。
第一、教育に関しての法改正の動きは結構な時間がかかる印象です。教員免許更新制度もめでたく廃止にはなりましたが、反発の声が大きくなってからかなりの時間がかかりましたよね。
特に財源のいらない法改正であっても時間が数年かかるのですから、財源がかなり必要な給特法の改正もやはりそれなりの時間がかかるのではないかと予想しています。
今は国もコロナ対策の費用捻出やらで大変ですからね。医療従事者や企業への給付金など、お金がいくらあっても足りない状況でしょう。
給特法の改正、それはつまり国から金を引き出すための戦いです。そしてそれは、教育業界だけでなく様々な分野で行われているようなことなのです。つまり給特法改正の重要性をもっともっと声高に叫ばなくてはならず、その根拠となるデータ等も時間をかけて収集し、突きつけていかねばなりません。
給特法の廃止は教員の長時間労働解消には繋がらないという意見もある
給特法を廃止したからといって、長時間労働の解消には繋がらないのではとの声も有ります。
残業代が出るということは、これまで働き方改革で残業を減らしてきた教員ほどこれから損をするということになります。
仕事をゆっくりとこなし、無意味に学校に残ることが得になってしまう、という面もあります。
給特法の廃止よりもまず、教員の職場改善や仕事の削減、意識改善をすることが肝心という意見ですね。
それはまあ確かに分からなくもないのですが、私としてはそれでも「給特法はおかしい法律」という意見は変わらないので、まずは給特法を廃止してから、職場改善なり意識改善なりに取り組んでいけばいいかと思われます。
今まで出していなかったのが異常なのであって、働きに対して残業代を出すのは当然です。公務員という民間の手本となるべき職種で、こんな働かせ放題のブラック法律をそのままにしておいていいはずがないんです。
教師は慣例を大事にする風潮があるので、給特法を気にしている教師の数はそこまで多くは無いのが実情でしょうけどね…。お金に執着がある人も多くない気がします。給特法とか給料とか気にする人は教師に向いてないと言われればそれまでなんですけどね。